彼女の【手】は、
人との「出会い」をエネルギーに換えるのがとても上手。
ぽかぽか陽だまりのような暖かさに満ちている。
その彼女が、
「 春は大好きな季節なのに
春はつらいんです。」
そう、つぶやいた。
春は、
「出会い」の季節。
たくさんの人が行き交う中を、
イキイキと忙しなく動き回る彼女の姿が目に浮かぶ。
「はじめまして」
ニコニコ笑顔で【手】を差し出して、
「よろしくね」
と、繋がったその【手】を放すまいと、ぎゅっと掴む。
けれど、
春は「別れ」の季節でもある。
「出会い」の数が多ければ、
「別れ」の数も多くなる。
人との繋がりの中で充足感を得る彼女にとって、
「別れ」はひどく辛いもののはず。
【手のひら】に刻まれた相の深さを見れば、
これまでに味わったであろう寂しい記憶の数々が
彼女の心に落とした影を表しているようで、切ない。
「元気でね」
いつもと変わらない笑顔で【手】を取りながら、
「さよなら」
の言葉とともに繋がった【手】をそっと放す。
何度経験したって、
平気になることなんてないんだろうな。
「出会い」の喜びと
「別れ」の寂しさ。
掴んで、放して。
放して、掴んで。
揺れ動く心もようを
その【手】に刻みながら。
きっと、これからも。