手のひら日記

【コーリングのときどき手のひら日記】2023.2.1  ブシノヨメ…

ちょっと前の話をひとつ。
秋も終わりの頃。

手相読みした帰り道、
その日最後に読ませてもらった「手」のことを思い出していた。

「それにしても真面目だったぁ。責任感もすごいし。
絶対に弱音吐かないでしょ。
我慢するし、耐えるし。
いや~、すごいわ。
めっちゃ、イケメンなんよね。
イケメンな武士なんよ。
そうそう、ブシ!
イケメンブシ!!
ブシ!ブシ!ブシ!ブシ!

え…????

…ブ…ブ…ブシ?!」

脳内での「ブシ」コールが止まらなくなった時、
突然【あのとき】の記憶がよみがえってきた。

15年くらい前のこと。
人生で一度だけ、手相を見てもらった【あのとき】。

ーーーーーーーー
薄暗い店内。
BARのカウンター越しに
静かに私の手をながめる、お兄さん。

彼が最初に発した言葉は

「武士の嫁だね」

だった。

「え??」

固まる、私。

彼は続ける。

「どこまで自分を犠牲にしたら気がすむの?
江戸時代でもないのに。
今、平成だよ。」

小さな声で、かすかに笑いながら。

「ブシ…ノ…ヨメ……??」

そこで思考は停止した。
その後のことは何一つ憶えていない。
ーーーーーーーー

【ブシノヨメ】

私の手が掴んでしまった、謎。

それからというもの、
この手のどこをどう読めば【ブシノヨメ】にたどり着くのだろうと、手をながめては考えるようになった。
けれど、
謎は深まるばかりで、解ける気配すらなかった。

そして、
時は過ぎ、平成は令和へと変わって、
冒頭の、あの「帰り道」に至るわけで。

【イケメンブシ】の彼の手と
【ブシノヨメ】の私の手。

脳内で2つを並べて、見比べてみる。

やっぱり全然似ていない。
…でもちょっと待ってよ。
【ブシ】を共通項にして見てみたらどうだろうか…………。

はっ!!
あった~!これだ~!

2つの「手」の中に、
たしかに同じ【ブシの世界】がひろがっていた。

なるほどね~、
お兄さん、こういう読み方してたのかぁ。
あ~、わかるわぁ。
たしかに、たしかに。
【ブシノヨメ】です、私。

笑えてしまうほど
あっけなく、いとも簡単に、
ようやく謎は解けた。

それにしても、
改めて唸ってしまうのは、
たった数分の【手相読み】で
15年以上も心に残る、忘れられない「言葉」を紡ぎだした、お兄さんの力量。

私も
そんな【手相読み】を目指したい。

楽しく明るく通りすぎて、あっという間に消えていく言葉や
静かで優しく、ずっと寄り添う言葉。

顔面パンチみたいな、強烈な言葉もいいかも。

すぐに腑に落ちなくてもいい。
いつかどこかで
スッと心に届く言葉を。

いろんな言葉を
届けていきたいな。

あ、
お兄さん…もうすっかりおじさんだろうけど、
今も手相読みされてるのかな。
いつまでも、お元気で。

【ブシノヨメ】は、おかげさまで毎日愉快に過ごしてますよ。

素敵な言葉を
ありがとうございました。

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