彼女は、
何も見えない霧の中で呆然と立ち尽くしてるー、
そんなイメージが浮かんでくるような柔らかい【手】をしてた。
「動けなくなってるね。」
そう声をかけてから
手相読みを始めた。
ひたすら、前だけを見て
走り続けるのは難しい。
時には
歩きたくなるし、
立ち止まりたくなるし、
座りたくなるし。
そんなときは、潔く、
体操座りでもして、
膝を抱えて頭も下げて。
目も閉じてしまえばいい。
でも、
いつか必ず
霧は晴れてきて、
いつの間にか
動きたくなってるから。
その時までは
自分で自分を「よしよし」でもしてあげながら
静かに見守ってて。
「がんばれないときは
がんばらないんだよ。」
キョトンとした顔がこちらを見る。
「よくやってるから。」
照れたような笑顔がかわいい。
そう伝えてから
手相読みを終えた。
息苦しい毎日、何も見えなくなるときもある。
でも、
その時間が
その経験が
その感情が
しなやかで頼もしい【手】に成長させていく。
いつか
思い描いた以上の、
想像さえしていない未来にたどり着けますように。
あなたなら、大丈夫だよ。
