昨年末、
年末も年末の早朝のこと。
人生初の「ぎっくり腰」に見舞われた。
玄関先で崩れ落ちたが最後、1ミリたりとも身体を動かすことができない。
「助けてっ~~。」
駆けつけた子どもたち、
見たことない母のさまにしばらく立ち尽くす。
「痛くて…動けない…」
と、現状報告。
すると、長男は
「大変だ~!!」と絶叫。
ひとしきり大騒ぎするだけして、走り去っていった。
……おい、兄よ…。なぜ、お前は行ってしまうのだ…?
一方、次男は
「よし、まかせとけ!」と、わたしの腕を取り、無理やり立たせようとする。
……弟よ…。その男気、どこで覚えてきた…?
でも、
「頼むけぇ…さわらないで。そっとしてて……」
不用意に動こうものなら
落雷のごとく激痛が全身を襲ってくることを、説明すると、
次男、静かに部屋へと戻っていった。
結局、ひとり。
冷え冷えとした玄関に
倒れこんだ姿勢のまま
ジョギングに出かけていった、クジラ(=夫)を待つしかなかった。
どのくらい経った頃だろう。
どうしたことか、
背中がじんわりあたたかくなってきた。
ーえ??なに???
おそるおそる首を動かし、後ろを見るとそこには
ヒーターをわたしに向けて立つ、次男が。
……惚れてまうやろがっ!
首を動かした痛みでなのか、
ヒーターの温かみでなのか、
なんだか、泣けてきた。
ーーーーーーーーーーー
それから
全回復まで3ヶ月……。
寝るも地獄、起きるも地獄。
ドリフ歩きでちびちび歩き
決死の覚悟でトイレに座り
衣類着脱のたびに絶叫し
やることなすこと、
何一つ、自分で完結できない。身体だけじゃなく、心も悲鳴をあげ続けていた。
毎日、長男に靴下を脱がせてもらいながら
介護されるとはこういう心持ちか、と何度も天を仰いだ。
あの時間、
間違いなくわたしは
「老いの試着」をしていた。
あれ以来、
おかげさまで
平和な日々が続いている。
すっかり若がえった、
若くもない、この身体。
腰に手を当てながら
大切に使わせてもらっている。
一日でも長く、自己完結できるように。
そして
どうか、ニ度目の「試着」はありませんように…。