手のひら日記

【三世の手のひら日記】2021.9.15

自分の手をじっくりと眺めた最初の記憶は、いつだったかな。
…あっ、思い出した!
小学校の卒業式の練習時間。体育館で椅子に座っていた時だ。
卒業証書授与の場面。
マンモス校のそれはとにかく「待ち時間」が長い。
自分の番まではドキドキしててあっという間だが、そこからが、まぁ辛い。
ーどうやってしのごう。
前列の子の後頭部を睨み続けてはみるものの、な~んもおもしろくない。
あっという間に限界がくる。
ーあ~、もう無理…。
うなだれたそのとき、自分の左手に目が止まった。
じっくり観察…。
手のひら   手の甲   指に爪。
そして、
指の関節を一本ずつ、一ヵ所ずつ、ゆっくり曲げてみる。
親指…人差し指…中指…薬指…小指……??
ーなんじゃ、わたしの小指?!
すっごい変!!!
第一関節のところを右手でちょんと押さえると…、
あら、まぁ。シルエットが耳の長い犬の横顔に見えてきた。
ーわぁ~犬だぁ~~!
よしよし、いい子いい子。お前はいい子だねぇ~。
ーワンワン…ワンワンワン!
わたしはようやく
退屈とは無縁の「愛犬」との豊かな世界を手に入れた。
あれから随分経ったけど、
「愛犬」は、今もわたしの左手で暮らしてる。
わざわざ会いに行くなんてことはさすがにもうしないけど、
静かにわたしの毎日を見守り、支えてくれている。
たのもしい、いい子。
忘れてないからね。
これからもずっと一緒だよ。

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