手のひら日記

【コーリングのときどき手のひら日記】2024.9.25  高校生の夏休み

高校生になったお兄ちゃん。
相変わらずのマイペースで
ごきげんに暮らしている。

夏休みに入ってからも

「学校休みのときくらいゆっくりしたいよ~。家にいたいよ~。」

ということで
スケジュールはほぼ「0」。

そんなんでいいのかい?
君の青春の煌めきはいずこに??

そんなことなどお構い無しで
極上引きこもり生活満喫中の彼に、
突然予想だにしない「ビッグイベント」が舞い込んできた。

ええっと…
ちょっと長くなりそうですが、
初めてづくしの刺激を受けて
一皮むけちゃったかも??な、
お兄ちゃんの初体験物語。

しばしお付き合いくださいませ。

あ、安心してください。
エロくないですよ、なんて(笑)

ーーーーーーーーー
事の始まりは
ある夜、彼のスマホに届いた一本のメッセージ。

「え?!え?!え?!え?!」

壊れたおもちゃみたいに
大声で「え?!」を繰り返してる。

賑やかなのはいつものことだけど、
このテンパりっぷりには
クジラ(父)と一緒に笑ってしまった。

「え?!え?!え?!え?!」
↓ ↑ ↓ ↑
「どういうこと?!」
↓ ↑ ↓ ↑
「は?意味わからんし!」
↓ ↑ ↓ ↑
「どうしよ…どうしよ…」
↓ ↑ ↓ ↑
「マジか?!」
↓ ↑ ↓ ↑
「え?!え?!え?!え?!」

しばらく、
この独り言ループが続いた。

声のトーンがようやく下がってきた頃、
私の呼び掛けが届いたようで、ゆっくりと顔をあげてこっちを見てきた。

「大丈夫?」

と声をかけると、

「全然っ大丈夫じゃない!
母さん、どうしよう!
おれ、バンドに誘われた!!」

目をまん丸にしながら
そう叫ぶと、
再びテンパりループの世界へ戻っていってしまった。

♪~~~~~~~~♪

メッセージの送り主は
クラスメイトの、とある女子。

バンドのメンバーは

ボーカル(♀️)←小・中学同じ
ギター(♀️)←連絡くれた子 中・高同じ
ベース(♂️)←中学同じ
ドラム(♂️)←中学同じ

4人は中3のクラスメイト。
でも、話したことはほぼないらしい。

「そりゃ、まぁ、
そんな距離感の人から
突然そんなメッセージもらったら、びっくりするね。」

なんて話してたら、

リンロン♪リンロン♪

動揺が続く彼の手元に、
彼女から続々と詳細が送られてくる。

要約すると、

【私たちは、
あるバンドのコピーバンドをしていて、キーボードメンバーを探しています。
9月はじめにライヴハウスで演奏することが決まっているので、それに一緒に出てほしいです。】

とのこと。

「いいじゃん、いいじゃん。
やったらいいじゃん!」

自分のことでもないのに
母の心はもうウキウキ。

ウカれた母を尻目に
天を仰ぎながらテンパりループを続けるお兄ちゃん。

どのくらい経った頃だろう、

「よし、決めた」

とソファから立ち上がり、

「おれ、やらせてもらうわ」

て、落ち着いた声で一言。

その場で
彼女にメッセージを返していた。

♪~~~~~~~~♪

それからは
彼のゆるゆるのんびり生活は一転した。

朝となく昼となく夜となく、
コピーするバンドの動画を流しては、耳コピで練習する日々。

時折、朝からバタバタしてるなと思ってたら、
「今日はメンバーで集まるから」
と、自転車で近所の交流センターへ出掛けていったりして。

そして、
あれよあれよという間に時間は過ぎていって、
いよいよ本番が近づいてくると、緊張からか落ち着かない様子でウロウロし出した。

「全然ダメだ…。上手くいかない。あ~、やっぱりピアノは一人で弾くのが一番だね。もう今回でバンドはおしまいにする。ないわ。」

なんて、
いつだってポジティブ思考の彼らしからぬネガティブ発言まで飛び出す始末。

これまで経験してきた、
どの「本番」とも違うこの不安な感触は、
味わったことのない重圧となり、彼の心にのし掛かっているんだろう。

でも、

「やるんでしょ?」

と訊ねると

「そりゃね。やるだけのことはやるよ。」

と、即答。
ほほぅ、実に、頼もしい。

【ダメだ~、もうムリ~て思ったときこそ、

絶対に目をそらさない!
絶対に目をつぶらない!

やることには
全力100%でまっすぐ向かっていく!】

これぞ、
これまでの「本番」を経験してきた時間の中で、
鍛えてもらった姿勢そのもの。

よしよし。
いいじゃないか。

成長していく彼の「心」が
垣間見えた気がした。

♪~~~~~~~~♪

そして、ついに本番当日。

学校から帰ってくると、
どしゃ降りの中、大急ぎで会場へと向かっていった。

本番直前、
彼からメッセージが届いた。

『 緊張しております 』

メンバーで揃えたバンダナを首に巻き、下からあおるような角度で自撮りした写真とともに。

「君は本番に強いんだぞ!!」

と、写真の彼にエールを送りながら、
『ファイト!』のスタンプだけを返した。

それから1時間後、

『 無事演奏終えました 』

と、あっさりした報告が届いた。今度は写真なしで…。

こうして、
お兄ちゃんのバンドデビューという初体験は無事に終わり、
気づけば、夏休みも終わっていた。

ーーーーーーーーー

本当は、
生で見たかったんだけどね。
本当に、
見ないでほしいと言われたからね。

こうやって
どんどん彼は離れていく。
けれど、
それは喜ばしいこと。

彼は彼の力で
未来を手繰りよせながら進んでいってるんだからね。

でも、やっぱり
生で見たかったな。

あ、そうそう。
一回限りのバンド活動のはずだったけれど…
本番後のマック打ち上げで、
「これからも一緒にやらない?」と誘われたらしく、
「やる」て返事してきたそう。

あ~、
ちゃんと青春してるじゃん✨

次のステージは半年後だそう。

お兄ちゃんの「手」には
未来が握られている。

バンドのみんな、
誘ってくれてありがとう!!
青春、ブラボー✨✨

次こそ、生で…この目で!
この願い(野望)がどうか叶いますように。

母の「手」にも
未来は握られているからね。

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