彼の【手】に初めて会ったのは、一年半くらい前のこと。
もの静かで、とっても優しい。
だけど、ひどく色味がない。
白黒…いや、灰色かな。
そんな印象の【手】だった。
先日、
久しぶりにその【手】を読ませてもらった。
「相変わらずのグレーだなぁ。
でも、これまでよりずいぶん手のひらが固くなってる。
ガードの張り方を身につけてきたのかも……」
なんて思いながら、
ゆっくりと、いくつか質問を投げかけてみた。
手相読みの最中、彼はほとんど声を発さない。
ほぼ、私の独り言。
まぁ、それでいいと思っていたし、私の問いに考えを巡らせているその様子が、彼からの答えだと思っていた。
だけど、この日は少し様子が違っていた。
ある問いかけに対して、
今まで聞いたことのない、生彩を帯びた「声」で答えが返ってきた。
「こんな頼もしい声でしゃべるんだ!」
たった一言だったけど、
間違いなく、
今、彼の【手】は大切なものを掴んでいる。
そう、確信できる声だった。
繊細で優し過ぎる彼にとって取り巻く世界は、きっと脅威に溢れているはず。
深い愛情さえも、
理解の範疇を越えて、
刃の如く、鋭く突き刺さっていることだろう。
何を選び、何を手放せばよいか、全く判断がつかないのも当然だと思える。
手のひらの彩りのなさは、それゆえなのかもしれない。
手相読みをしていて、つくづく思うのは、
どんな「選択」も
間違いなく「その手らしい」ということ。
紆余曲折あろうとも最終的には、自分にぴったりなものを掴んでいる。
だから
今、彼がその手に掴んでいる「何か」はとても彼らしい「何か」で、
必ず彼らしい「未来」に繋がっているんだ、と、確信している。
そう、だから大丈夫。
その選択でいいんだよ。
「とても大切なものを掴めているからね。
しっかり握っておいておくんだよ。」
そう伝えて、お別れした。
彼の手が、
いつか彩り豊かな印象になりますように。
そう、願ってる。
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今年も、たくさんの【手】に出会うことができて、とても幸せでした。
訪ねてきて下さった皆さま、どうもありがとうございました。
来年も、私の手相読みが少しでも皆さまのお力になれるよう、丁寧に頑張っていきます。
どうぞよろしくお願いします。
では、では、
よい年をお迎えくださいね。
コーリング 渡邉恵